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平成28年度の全国安全週間が7月1日から始まります。全国安全週間に職場パトロールを実施する企業が多いと思いますので、今回は職場パトロールについてご紹介します。

職場パトロールとは

職場パトロールとは、その名の通り担当者が職場を見て回ることによって「安全衛生に対する意識向上」と「職場に存在する危険・不衛生の発見およびその後の対策」を目的として実施するものです。

5S、ヒヤリ・ハット、KY活動、リスクアセスメントの実施や作業手順書の作成等の活動は、安全衛生の問題発生を未然に防ぐ効果が期待できますが、例えどれだけ優れた安全衛生の仕組みを構築していても気の緩みがあれば事故は起こり得ます。

また、職場は人の異動や設備の更新、あるいは時間帯によってその姿を変えます。職場の状況が変われば安全衛生の取り組みも変える必要がありますが、その為には定期的に職場を見回ることが必要です。

職場パトロールは誰がするもの?

職場パトロールを誰が実施するかについては様々に考えることが出来ますが、中小企業で多いと思われるパターンをご紹介します。

  1. 衛生管理者や安全管理者
  2. 50人以上の事業場では衛生管理者や(業種によっては)安全管理者の選任義務があります。安全管理者は常に職場の安全に目を光らせておく必要がありますし、衛生管理者は週1回以上職場を巡視する必要があります。

  3. 衛生委員会や安全衛生委員会の委員
  4. 50人以上の事業場であれば衛生委員会や(業種によっては)安全衛生委員会の設置義務がありますが、そのような場合は委員会の活動として職場パトロールを定期的に実施するケースが多いものと思われます。このケースでは漫然と職場を見て回るだけでなく、重点項目(特定の職場に焦点を絞る、人の行動に注目する、5Sの実施状況に注目する等)を予め定めた上で実施することも多いでしょう。頻度としては週1回から月1回ぐらいまでが多いと思われます。

  5. 社長をはじめとする経営トップ
  6. 社長や工場長が職場パトロールを実施する目的は、従業員の意識啓発にあります。よって実施頻度は年に1~2回が多いと思われますが、現場を知ることは決して悪いことではありませんので、もっと頻度を上げてもよいでしょう。

  7. 管理職
  8. 管理職が自部署をパトロールすることで、自身が出した指示を部下が徹底しているか確認することが出来ます。また他部署をパトロールすることで、他部署の良い点や自部署で足りない部分について気付きを得ることが出来ます。頻度としては月1回ぐらいが目安ではないでしょうか。

以上が中小企業で多いパターンと思われますが、その他にも当番制で職場パトロールを実施するケースも見受けられます。また、正社員だけでなくパートさんにも参加してもらうことで、当事者目線でのパトロールをする事が出来ますし、意識向上にも繋がるでしょう。

職場パトロールで見るポイント

職場パトロールで見るべきポイントとして、具体的にどのようなものがあるでしょうか。

  1. 不安全行動はないか
    職場パトロールではどうしても施設や設備といった「モノ」に目が行きがちですが、実際に災害が発生するのは人の行動に起因する場合がほとんどです。よって、人の行動や動作に対して意識的に注目し、不安全行動がないか、作業手順が守られているか、危険な場所や物を軽視している様子はないか等を確認します。
  2. 施設・設備・装置など
    • 施設・・・暑さ・寒さ・明るさ、通路上の段差や障害物、階段の手摺や滑り止め、防火扉が荷物で塞がれていないか、ヒト・モノの動線が適切か、等々
    • 設備・装置・・・始業前点検、定期点検等がきちんと実施されているかどうか、安全装置がきちんと作動する状態か等々
  3. 5Sの実施状況
  4. 所定の位置にヒトやモノが配置されているか、ゴミが散乱していないか、設備・装置・床などが汚れていないか等を確認します。

職場パトロールは、慣れるまでの間は何を見ればよいのかわからないものです。慣れてくるまではチェックリストを作成して活用する等により、経験が浅い初心者でも取り組みやすくなるでしょう。

指摘事項が見つかった場合は

職場パトロールで不安全行動、不安全状態、不衛生状態が見つかった場合は、以下の点に注意して指摘しましょう。

  • 些細な事でも躊躇しない
  • 些細な事から重大事故に発展することがある為、躊躇せず指摘しましょう。どのような事故に繋がる危険性があるかを伝えることでより効果的です。

  • その場で指摘する
  • 後になってからでは指摘をする事が面倒になりますし、何より指摘を後回しにしたことで事故が発生する可能性があります。指摘を受ける側もその場で指摘されるのと後から指摘されるのでは受け止め方が違ってきますので、その場で指摘するように努めましょう。

  • 頭ごなしに指摘しない
  • 不安全行動、不安全状態や不衛生状態には理由があります。現場の者と一緒に原因を探り、改善策を検討し、協力して改善を進めましょう。

指摘事項は水平展開しましょう

職場パトロールで指摘事項が見つかった場合は、(安全)衛生委員会で報告したり、掲示板やイントラネットに情報をあげたりして、社内全体で共有するようにしましょう。指摘事項については他の職場でも同様事例が発生していることがよくあります。人の振り見て我が振り直せではありませんが、他部署の指摘事項を自部署に置き換えて考えることは重要です。

おわりに

職場パトロールをこれから始めようという場合、経営トップが職場パトロールにお墨付きを与えることが重要です。職場パトロールは一般的な縦の指示命令系統に属していないため、経営トップの後ろ盾が無いとなかなか上手くいかないことがあります。職場パトロールでの指摘が尊重されるような体制づくりが必要です。

参考資料
「製造業向け 未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署・(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html
「製造事業者向け 安全衛生管理のポイント ~ パートタイマーや期間従業員などの安全衛生のために ~」厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/110329-1a.pdf
増本清・増本直樹(2013)「労働安全衛生管理実務便覧」労働調査会