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リスクアセスメントとは

リスクアセスメントは安全衛生活動の1つで、潜在的な危険を「(災害が起こった場合の)重篤性」「(災害に繋がる)可能性」「(潜在的な危険に接する)頻度」の3つの指標で評価して、優先的に対策が必要な危険を明らかにした上で災害発生を予防する活動です。

リスクアセスメントの流れ

リスクアセスメントは次の流れで進めます。

  1. 潜在的な危険の特定
  2. 職場や作業にどのような危険が潜んでいるか、問題点を指摘していきます。小さなものから大きなものまで、可能なかぎり多くの危険を洗い出します。

  3. 潜在的な危険の評価
  4. 洗いだした潜在的危険の1つ1つについて、3つの指標(「重篤性」「可能性」「頻度」)で評価します。

  5. 対策の立案・実行
  6. 潜在的危険を評価した結果、対策の必要性が高いものから優先的に対策を立案し、実行します。

潜在的な危険の評価方法

潜在的な危険を3つの指標(「重篤性」「可能性」「頻度」)で評価することは既に述べたとおりですが、具体的には次の通りです。

重篤性・可能性・頻度を見積る

  1. (災害が起こった場合の)重篤性
  2. 潜在的危険が顕在化して事故が発生した場合に、死亡事故になるのか、重傷事故(休業災害)になるのか、軽傷事故(無休災害)になるのかを想定します。例として、「重傷事故=休業災害、軽傷事故=無休災害」としましたが、「重傷事故=休業1ヶ月以上、軽傷事故=休業1ヶ月未満」としても構いませんし、「死亡事故、重傷事故、中傷事故、軽傷事故」の4段階評価に変更するなどしても構いません。

  3. (災害に繋がる)可能性
  4. 潜在的期間が災害に発展する可能性を想定します。可能性を判断するにあたっては、過去に発生した災害のデータがあれば参考にできますし、過去のデータが無い場合であっても、安全装置の有無、作業手順が決められているか・守られているか、などの要素を参考にして想定します。想定結果から3~4段階に分けて評価します。

  5. (潜在的な危険に接する)頻度
  6. 潜在的な危険が存在する場所にどの程度出入りするのか、またはどの程度の時間居るのか。潜在的な危険のある作業をする頻度はどの程度あるか、作業をする時間は長いのか短いのか、などを参考にして評価します。こちらも3~4段階に分類しましょう。

重篤性・可能性・頻度の見積り結果を点数化する

点数表を予め用意しておきます。以下の点数表の例をご覧下さい。

点数化の例

参照:増本清・増本直樹(2013)「労働安全衛生管理実務便覧」労働調査会 81P

重篤性・可能性・頻度の見積り結果を表に当てはめて点数化し、評価します。「評価点数のつけ方」の表において、重篤性に対して重みをつけていますが、必ずしも重みをつける必要はありませんので、会社ごとの考え方によって変えてしまって構いません。「評価区分の決定」の表についてもこの例に縛られることなく、自由に決めて構いません。

対策を立案し実行する

評価の結果、改善の必要性が高いものから優先的に対策の立案・実行をします。対策を立案するにあたって、危険性の完全な除去が難しい場合や費用対効果が釣り合わない場合などは、危険性を低減させる対策を検討するなど、柔軟に対応しましょう。

リスクアセスメント実施の頻度

リスクアセスメントは危険要因の洗い出しや点数化をする時間が必要です。対策を立案・実行するのにも時間が必要です。また、対策の実行には予算を押さえる必要もあるでしょうから、一般的には年1回から半年に1回程度の実施が多いでしょう。

化学物質とリスクアセスメント

平成28年6月1日より、一定の危険有害性がある化学物質について、リスクアセスメントの実施が義務化されました。(その他、他人への譲渡提供時に容器などへのラベル表示も義務化されています。)

これは、製造業や建設業などに限った話ではなく、小売業や飲食業などであっても特定の化学物質を使用していればリスクアセスメント実施の義務が課されています。また、あらゆる規模で実施が義務付けられています。

例えば、小売業でレジカウンターの粘着テープ跡を拭き落とすために使用した洗浄液を床にこぼしてしまい、拭きとった雑巾を足元のゴミ箱に捨てたところ、洗浄液に含まれていた有機溶剤が揮発して有機溶剤中毒になった事例があります。また、ホテル業で温泉水のろ過装置に誤って別の装置で使う薬液(塩酸)を投入したために塩素ガスが発生して塩素ガス中毒になった事例などもあります。(以上、厚生労働省 職場のあんぜんサイトより)これらの事例にあるように、化学物質は意外と身近なところにもあるため、あらゆる業種や規模で実施が義務付けられたものです。

化学物質のリスクアセスメントも基本的な手法は同じですが、危険性を評価するために化学物質の暴露量を測定することや化学物質の専門的知識を習得することが困難であることも考えられるため、これらを省略する「コントロール・バンディング」という簡易な危険性評価の手法があります。あくまでも簡易的な手法のため安全志向の結果が出ますが、本格的なアセスメントが難しい場合は利用を検討してみましょう。コントロール・バンディングは厚生労働省の職場のあんぜんサイト専用ページでツールが提供されています。

化学物質のリスクアセスメントについてより詳しい情報は、こちら(リスクアセスメント(化学物質))からご確認下さい。

参考資料
増本清・増本直樹(2013)「労働安全衛生管理実務便覧」労働調査会
厚生労働省 職場のあんぜんサイト http://anzeninfo.mhlw.go.jp/