投稿日:

危険予知訓練(KYT)とは

危険予知訓練(KYT)とは、職場や作業に潜む危険と、それにより発生する災害について話し合い、危険に対する意識を高めて災害を予防しようというものです。

危険予知訓練を始める前に

危険予知訓練では職場や作業に潜む危険について話し合いをするわけですが、安全衛生活動を経験したことが無い場合は、どのような危険が潜んでいるか見当がつかず、話し合いもすぐに終わってしまう事が多いでしょう。

これまで安全衛生活動に取り組んだことがない会社の場合は、以前にご紹介したヒヤリ・ハット活動から始めることをお勧めします。ヒヤリ・ハット活動では事故になってもおかしくなかった事案について情報共有することになりますので、そのような情報に日頃から触れることで、危険に対する想像力を養うことが出来ます。

危険予知訓練を始めてみましょう

ヒヤリ・ハット活動などで危険に対する感覚がある程度養われたら、危険予知訓練にステップアップしてみましょう。危険予知訓練は次の手順で進めていきます。

  1. メンバーの選出

    通常は、複数人で話し合いをしながら進めますので、メンバーを選出しましょう。

    • 事業場の責任者やそれに準じる者
    • 危険を予防するための対策を検討しても、実行するためにはリーダーシップが必要です。事業場の責任者がメンバーに加わることで、対策を実行しやすくなります。

    • 安全衛生スタッフ
    • 安全管理者、衛生管理者、(安全)衛生推進者など。(安全)衛生委員会が設置されている場合は、委員会の場を利用してもよいでしょう。

    • 安全衛生活動の未経験者
    • 未経験者を参加させることで危険予防に対する意識向上が図られるとともに、経験者の意見に触れることで、危険に対する目が養われることが期待できます。

    • パートタイマーなど正社員以外の者
    • 安全衛生活動は職場の全員が主役です。また、正社員の目線では見えにくい危険が潜んでいる場合もありますので、正社員以外からもメンバーに参加してもらいましょう。

  2. 現状の把握
  3. 職場や作業にどのような危険が潜んでいるか、問題点を指摘していきます。問題点の指摘は自由に行い、他のメンバーの批判は避けるようにします。小さなものから大きなものまで、可能なかぎり多くの危険を洗い出してみましょう。

    作業現場の写真や作業の様子を描いたイラスト、作業手順書などを見て問題点を指摘するようなやり方や、職場パトロールを実施して、パトロール後に話し合いをするやり方などが考えられます。

    なお、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、豊富な災害事例を調べることが出来ますので、訓練に重きを置く場合など、危険予知訓練の材料探しに活用することが出来ます。

  4. 危険の本質追求
  5. 問題点が一通り出揃ったら、問題点の原因についてメンバー間で検討し、整理します。ここでは例として、落下の危険性についてその原因を考えてみましょう

    • 設備・環境
    • 安全柵が設置されていない・鉄階段に水がこぼれている など

    • 作業方法
    • 荷物を抱えて足元が見えない状態で階段を歩いている・人が乗り込んだ状態の作業台をフォークリフトで固定すること無く持ち上げている など

    • 作業者
    • 落下防止の安全帯が渡されているのに使っていない・風邪をひいて足元がふらついている など

    問題点の原因はそのほとんどが上に挙げた「設備・環境」「作業方法」「作業者」にあります。安全衛生の経験が浅い場合などは、これらを切り口として与えてもよいでしょう。

  6. 対策の検討
  7. 整理した問題点について、対策を挙げていきます。対策は「気を付ける」に頼るのではなく、根本的な対策を考えることが望ましいです。例えば鉄階段に水がこぼれているケースを例に上げると、

    • 張り紙をして注意を促す
    • だんだんと気が緩んでくるかもしれません。また、張り紙に気付かなかったり、張り紙が剥がれて失くなるかもしれません。

    • 水がこぼれていたらすぐに拭き取る
    • だんだんと面倒になってやらなくなるかもしれません。

    • 手洗い場から水が漏れて階段に流れているので、手洗い場を修理する
    • そもそも階段が濡れることが無くなりますので、この中では最も根本的な対策になります。

  8. 目標設定
  9. 挙げられた対策についてメンバー間で話し合います。必要性・実効性・コスト面などを検討し、実施する対策を決定・実行します。

予防を心掛けましょう

「事故は起こってからでは遅い」というフレーズがありますが、その通りだと思います。万が一、死亡事故が起こってしまった場合は、失われた命は二度と取り戻すことは出来ません。事故は起こる前に予防することが大事になります。危険予知訓練は事故の予防を目的としています。悲しい事故が起こる前に取り組みを始めて頂ければ幸いです。

参考資料
「製造業向け 未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署・(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118557.html
「製造事業者向け 安全衛生管理のポイント ~ パートタイマーや期間従業員などの安全衛生のために ~」厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/110329-1a.pdf