平成28年10月1日以降、各都道府県の地域別最低賃金額が変更される予定です。京都府は平成28年10月2日から831円に変更になる予定です。各都道府県ごとの最低賃金額と改定予定年月日はこちら(平成28年度地域別最低賃金)からご確認下さい。
都道府県ごとに金額が異なります
地域別最低賃金は「地域別」と言うだけあって、都道府県ごとに異なる金額が定められています。
「流石にそれは知っています!」
おそらくほとんどの方がそのように仰ると思います。それでは、次のようなケースではどうでしょうか?
喫茶店を2店舗経営しているとします。京都市内(京都府)に1店舗と大津市内(滋賀県)に1店舗です。この場合、最低賃金は京都府のものと滋賀県のものと、どちらを適用するのが正しいでしょうか?
皆さんはどうのようにお考えになりましたか?
この場合、教科書的な模範解答としては、京都の店舗で勤務する場合は京都府の最低賃金を適用し、大津の店舗で勤務する場合は滋賀県の最低賃金を適用する、ということになります。
しかし、この考え方は現実的では無い場合もありますよね?
例えば、大津の店舗のアルバイトさんが風邪をひいて急に休むことになり、普段は京都で働いてもらっているアルバイトさんにお願いして、その日だけ大津の店舗に行ってもらう事があるかもしれません。また、普段から京都の店舗と大津の店舗を掛け持ちで働いてもらっているアルバイトさんがいるかもしれません。
こうなってくると、京都の時給で計算する日と滋賀の時給で計算する日が混在して、給与の計算が煩雑になってきます。計算が煩雑になると、計算誤りの可能性も高くなってしまいます。
自社において、都道府県をまたがって勤務することが多いのか少ないのか、従業員の人数が多いのか少ないのか、給与計算の事務担当者のレベルが高いのか低いのか、といった諸要素を勘案して、場合によっては滋賀の店舗であっても京都府の最低賃金に合わせておく方が合理的で正しい判断ということもあり得ます。
最低賃金の変更日がある月は給与計算に注意
最低賃金が変更になるタイミングの給与計算には注意が必要です。例として、「給与計算が毎月20日締」「京都府で営業」「時給を最低賃金に合わせている」という条件で説明します。
平成28年9月21日から平成28年10月1日までは 時給807円で計算
平成28年10月2日から平成28年10月20日までは 時給831円で計算
このように、1回の給与計算で2通りの時給計算をする必要がありますので、注意して下さい。
全国展開しているような場合には、さらに計算が大変になります。都道府県ごとに最低賃金の額も最低賃金が変更になる日付もばらばらなので、上の事例で確認した手順を都道府県ごとにしていくことになります。
日をまたいで勤務する場合の最低賃金変更はどのタイミングか
例えば、京都府であれば最低賃金の変更は10月2日からですが、10月1日の21時から翌朝5時まで勤務した場合、21時から翌朝5時までの全ての時間を変更前の時給807円で計算してよいのでしょうか?
この場合、10月1日の23時59分までは時給807円で計算して構いませんが、10月2日の0時00分以降は時給831円以上で計算しなければなりません。これは、10月2日の深夜0時00分から最低賃金変更の法的効力が発生するためです。
この例では、1勤務の中で2つの時給を用いて計算しなければならず、支払う側も支払われる側も混乱する可能性がありますから、10月1日の勤務開始時点から時給831円で計算することも検討する価値があるでしょう。
(注:上記の例において、22時から翌朝5時までは深夜割増賃金の支払いが別途必要となります。)
産業別の最低賃金にも注意
最低賃金には、都道府県ごとに定められている地域別最低賃金のほかに、産業別に定められている「特定最低賃金(※1)(※2)」というものがあります。
※1 特定最低賃金は厚生労働省ホームページからご確認下さい。
※2 特定最低賃金の定めがない業種もあります
自社の業種に特定最低賃金が設定されている場合、地域別最低賃金と特定最低賃金を比較して、金額の高い方が最低賃金として適用されることになります。自社の業種が特定最低賃金の適用を受ける業種であるか判断に迷うような場合は、管轄の労働基準監督署に確認しておくことをお勧めします。
月給や日給の場合の最低賃金
月給や日給の場合は最低賃金の意識が希薄になりがちですが、これらも最低賃金の適用を受けます。月給や日給の場合は「時給に換算した金額が最低賃金額以上」である必要があります。
月給の場合
月給÷一ヶ月の平均所定労働時間
日給の場合
日給÷その日の所定労働時間
より詳細な最低賃金の確認方法は厚生労働省ホームページで確認することが出来ます。
最低賃金の対象となる賃金とは?
賃金として、基本給以外にも各種手当をお支払いになっていることが多いと思います。しかしながら、最低賃金を上回っているか検討するときには、全ての賃金が対象になるわけではありません。具体的には、次の賃金を除外して最低賃金を上回っているか検討しなければなりません。
- 精勤手当(皆勤手当)、家族手当、通勤手当
- 時間外割増賃金、休日割増賃金、深夜割増賃金
- 賞与など、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 結婚手当など、臨時に支払われる賃金
特に、精勤手当(皆勤手当)、家族手当、通勤手当を含めて最低賃金の検討をしてしまいがちですので、注意が必要です。また、賃金の名称によらず実態で判断しますので、例えば「扶養手当」や「子女手当」という名称であったとしても、実質的には家族手当である場合には、最低賃金の検討から除外します。